はじめに|Public Cloud、正直よくわからない
S/4HANA Public Cloudをはじめて導入するプロジェクトで、
必ずといっていいほど出てくるのが、こんな質問です。
- 「項目って自由に追加できるんですか?」
- 「条件チェックとかロジックって書ける?」
- 「エラーメッセージ、業務に合わせて変えられます?」
- 「WFってS/4の中で作るんじゃないの?」
ECCやPrivate Cloudの経験がある人ほど、
**「今までできていたことができない」**感覚に戸惑います。
でもこれは、スキル不足でも制限でもなく、
Public Cloudの思想がまったく違うだけ。
この記事では、
👉 「何ができて、どこまでできるのか」
👉 実際の業務要件を例に
わかりやすく整理していきます。
S/4HANA Public Cloudの前提を整理しよう
Public Cloudを理解するうえで、一番大事なのはこの考え方です。
SAPが用意した標準をベースに、
“許可された範囲だけ”拡張する
Private Cloudのように
- SPROで何でも設定
- ABAPで自由に拡張
という世界ではありません。
Private Cloudとの思想の違い

- Private Cloud
→ SAPを業務に合わせる(自由度高) - Public Cloud
→ 業務をSAP標準に合わせる(安全・高速)
Public Cloudでは
👉 「できない=NG」ではなく「最初から設計に含めない」
という考え方が重要です。
Public Cloudでできる拡張の全体像
Public Cloudの拡張は、大きく3つに分かれています。

拡張レイヤー全体像
| レイヤー | 主な利用者 | 役割・特徴 |
|---|---|---|
| In-App拡張 | IT/キー・ユーザー | 項目追加・軽いロジック |
| Developer拡張 | 開発者 | ABAP(制限付き)による拡張 |
| BTP(Side-by-Side) | 開発者 | WF・外部連携・重い処理 |
この記事では、最初につまずくことが多い In-App拡張の項目追加や制限付きBAdI に絞って解説します。
よくある質問①|項目って追加できるの?
結論:できます(In-App拡張)
Public Cloudでは、**カスタム項目(Custom Fields)**として追加します。
できること
- 受注・得意先などの画面に項目追加
- DBに保存される
- 検索条件や帳票、APIにも出せる
実例
- 「WF対象フラグ」
- 「社内管理用チェック」
カスタム項目の位置づけ
- Fioriで項目定義
- 画面に自動反映
- 保存・API連携可能
👉 「項目を持たせる」こと自体は得意分野です。
よくある質問②|条件チェックや制御はできる?
結論:できます(制限付きBAdI)
ただし、なんでも自由に書けるわけではありません。
制限付きBAdIとは?
SAPが用意した
「ここでだけ処理を足していいよ」
という公式フック
- 自分でBAdIを作ることは不可
- 処理内容も軽めが前提
実例:プラント単位でWFフラグONを制御
要件:
- プラントごとにWF対象可否を制御
- NGなら保存時にエラー
実装イメージ
- プラントに「WF許可フラグ」をカスタム項目で追加
- 受注保存時BAdIでチェック
- NGならエラー表示
制限付きBAdIの役割
- 入力
- 保存前チェック(BAdI)
- OK → 保存 / NG → エラー
👉 チェック・止めるが基本役割。
よくある質問③|エラーメッセージって変えられる?
結論:できます(事前定義が前提)
Public Cloudでは、
Fioriアプリでカスタムメッセージを定義します。
実例メッセージ
このプラントでは承認対象に設定できません。
管理者にお問い合わせください。
- 日本語・英語対応OK
- エラー/警告の切り替え可能
❌ 実行時に文字列を組み立てる
❌ その場で自由に文章生成
👉 **「事前定義して呼び出す」**がルール。
よくある質問④|WFってどこで作るの?
結論:S/4ではなくBTP
S/4 Public Cloudでは
- WF条件の材料を持つ
- 判断結果を外に渡す
だけ。
実例フロー(今回の要件)


- S/4で受注作成
- WFフラグON/OFFを保持
- APIでBTPへ連携
- BTP側でWF起動
👉 王道かつ推奨構成です。
今回の要件まとめ(実現可否)
| 要件 | 実現可否 | 実装場所 |
|---|---|---|
| WFフラグ保持 | ⭕ | In-App拡張 |
| プラント制御 | ⭕ | 制限付きBAdI |
| エラーメッセージ | ⭕ | カスタムメッセージ |
| WF起動 | ⭕ | BTP |
まとめ|Public Cloudで失敗しないために
Public Cloudでは、
「S/4で全部やろう」としないことが成功の近道です。
- S/4:データとルールの入口
- BTP:流れと業務ロジック
この切り分けができると、
要件定義・設計・お客さん説明が一気に楽になります。


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