はじめに|「分からないまま」は、あなただけじゃない
SAPプロジェクトに参画したばかりの頃。
会議の中で当たり前のように出てくる、
「このロール入ってますか?」
「それ、権限の問題ですね」
「SU01で見てください」
正直、何を言っているのか分からない。
でも今さら聞けないし、分かったふりをしてしまう。
――そんな経験、ありませんか?
安心してください。
SAPの権限を最初から理解している人なんて、ほとんどいません。
SAP権限は、
・難しそう
・とっつきにくい
・後回しにされがち
という特徴を持つ分野です。
だからこそ、分からないままPJに入ってしまうのは、とても自然なことです。
この記事では、
「権限設計ができるようになる」ことよりも先に、
“怖くなくなる”“会話についていける”状態を目指して、SAP権限を一から解説します。
そもそもSAPの「権限」って何を守っているの?
SAPの権限というと、
- セキュリティ
- 内部統制
- 不正防止
といった堅いイメージを持つ人が多いと思います。
もちろんそれも正解ですが、
現場目線で見ると、もっとシンプルです。
SAPの権限とは、「誰が・どの業務を・どこまでできるか」を決める仕組みです。
たとえば、
- データを見るだけの人
- 登録できる人
- 変更や取消までできる人
これらを区別せずに運用すると、
業務ミスや不正が簡単に起きてしまいます。
SAPは会社の基幹業務を扱うシステムだからこそ、
権限が細かく、厳しく作られているのです。
SAP権限の全体像を一度でつかもう
細かい設定の前に、まずは全体像です。
SAPの権限は、だいたい次の要素で構成されています。
- ユーザ
- ロール
- トランザクションコード
- 権限オブジェクト
- フィールド値
ここで大事なのは、
ユーザに直接細かい権限を設定しないという点です。
SAPでは、
- ロールという「役割の箱」を作り
- そのロールをユーザに割り当てる
という考え方をします。
ユーザ = 人
ロール = その人が担当する仕事のセット
このイメージを持てるだけで、
権限の理解は一気に楽になります。
「組織ロール」と「機能ロール」の考え方
プロジェクトではよく、
「組織ロール」
「機能ロール」
という言葉が出てきます。
これはSAPの正式用語というより、
権限を整理するための考え方です。
組織ロールは、
- 会社コード
- プラント
- 販売組織
など、組織に関わる情報をまとめたもの。
一方、機能ロールは、
- 受注登録
- 請求書処理
- 支払処理
といった、業務内容そのものをまとめたものです。
この2つを分けておくことで、
- 組織が変わった
- 担当業務が変わった
といった場合でも、
権限を柔軟に組み替えることができます。
「登録・変更・照会」はどこで決まるの?
SAPを使っていると、
「表示はできるのに、登録できない」
「変更しようとするとエラーが出る」
という場面によく遭遇します。
このとき重要なのは、
トランザクションコードだけで制御されているわけではない
という点です。
SAPでは、
- 同じトランザクションでも
- 表示だけできる人
- 登録・変更できる人
を、権限オブジェクトの設定で制御しています。
つまり、「登録・変更・照会」は
権限の中身で決まっている、ということです。
この考え方を知っているだけで、
権限エラーに遭遇したときの混乱がかなり減ります。
権限を一から設定する流れを追ってみよう(実務編)
ここからは、
実際にSAPで権限を設定するときの流れを見ていきます。
すべて理解する必要はありません。
「こういう順番で作業しているんだな」と掴めれば十分です。
①ユーザを作成・確認する(トランザクションコード:SU01)
まず使うのが SU01 です。
SU01では、
- ユーザの作成
- ユーザ情報の変更
- ロールの割り当て
を行います。
ここで覚えておいてほしいのは、
ユーザにはロールを割り当てるだけという点です。
細かい権限設定は、ユーザではなくロール側で行います。
②ロールを作成・編集する(トランザクションコード:PFCG)
SAP権限の中心となるのが PFCG です。
PFCGでは、
- ロールの作成・コピー
- トランザクションコードの登録
- 権限データの生成・調整
を行います。
プロジェクトでは、
既存ロールをコピーして調整するケースが多いです。
③ロールにトランザクションコードを割り当てる
PFCGでロールを作成したら、
そのロールで使わせたいトランザクションコードを登録します。
ここで注意したいのは、
トランザクションを入れた=全部できる、ではない
という点です。
実際に何ができるかは、
次の「権限データ」で決まります。
④権限データを生成・調整する
トランザクションを登録後、
PFCGで「権限データの生成」を行います。
すると、
- 権限オブジェクト
- フィールド値
が表示されます。
最初は難しく見えますが、
主に調整するのは、
- 組織レベル(会社コードなど)
- 登録・変更・照会に関係する項目
です。
⑤組織レベルを設定する
会社コードやプラントなど、
組織に関わる項目をここで設定します。
これにより、
「同じ業務だけど、別会社では使えない」
といった制御が可能になります。
⑥ロールをユーザに割り当てる(トランザクションコード:SU01)
ロールが完成したら、
再び SU01 に戻り、ユーザにロールを割り当てます。
これで初めて、
「このユーザは、この業務を、この範囲でできる」
という状態が完成します。
⑦権限エラーが出たときに確認する(トランザクションコード:SU53)
操作中に権限エラーが出た場合は、
直後に SU53 を実行します。
SU53では、
- どの権限オブジェクトが
- 何に引っかかったのか
を確認できます。
最初は内容を読めなくても構いません。
「権限の問題だ」と切り分けられるだけで十分です。
実務でよくある「権限が分からないあるある」
- このロール、何のためにあるのか分からない
- とりあえず強い権限を付けられそうになる
- 設定ミスか権限不足か判断できない
これは、誰もが一度は通る道です。
SAP権限は、
後から理解が追いつく設計になっているため、
最初は分からなくて当たり前です。
PJで最低限ここだけ分かっていれば大丈夫
最初からすべてを理解する必要はありません。
最低限、次の3つが分かっていれば十分です。
- ユーザとロールの関係
- 登録・変更・照会の考え方
- 権限エラー時にSU53を見る、という発想
これだけで、
PJでの立ち位置がかなり楽になります。
まとめ|SAP権限は「慣れ」ではなく「構造」
SAP権限は、暗記するものではありません。
必要なのは、構造を理解することです。
一度全体像が見えると、
権限は「怖いもの」から「読めるもの」に変わります。
この記事が、
SAPプロジェクトで少し肩の力を抜くきっかけになれば嬉しいです。

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