はじめに
SAPを使った分析に慣れている人ほど、最近よく耳にする
Snowflake や Databricks に対して、次のような違和感を持つのではないでしょうか。
- 汎用性が高い
- 同時負荷に強い
- ゼロコピーでSAPデータを使える
と聞くと、
「それなら、もうBWやDatasphereはいらないのでは?」
と感じてしまうのも自然です。
一方で、
「SAP分析で何を・どこまで・誰が見るのか」を考え始めると、
SnowflakeやDatabricksがしっくりこない感覚も残ります。
本記事では、
SAPを理解している人が迷いやすいこのポイントについて、
- SAP Snowflake とは何か
- SAP Databricks とは何か
- Datasphere / BW/4HANA と何が違うのか
- 置き換えなのか、補完なのか
を、設計者目線で整理します。
まず前提整理:SAP分析基盤のおさらい
SnowflakeやDatabricksを正しく理解するために、
まずはSAP側の登場人物を整理しておきます。
- SAP S/4HANA
業務トランザクションの源泉。会計・販売・購買・在庫などの「正」がある場所。 - SAP Datasphere
SAP業務の意味(勘定、期間、組織)を保ったまま、データをつなぎ・整える基盤。 - SAP BW/4HANA
長期・大量データを蓄積し、分析用に作り込む公式DWH。 - SAP Analytics Cloud
人が「見る・考える・決める」ための可視化・計画ツール。
ここで重要なのは、
SAPの分析は一貫して「業務意味論」を中心に設計されているという点です。
SAP Snowflake とは何か
Snowflakeそのものの正体
Snowflake は、
SAP専用の製品ではありません。
- 超スケーラブル
- 同時アクセスに強い
- クラウドネイティブ
- SAP/非SAPを問わない汎用DWH
という性質を持ちます。
Snowflakeは、
「データを高速に溜めて、多くの人に配る」
ことに非常に長けています。
SAP Snowflake(ゼロコピー)で何が変わったのか
近年注目されているのが、
SAPデータをSnowflake上でコピーせずに参照できる(ゼロコピー) という連携です。
これにより、
- SAP側のDB負荷を抑えられる
- データ複製コストが減る
- Snowflakeの計算能力を活かせる
といった 技術的メリット が生まれました。
ここだけを見ると、
「もうSnowflakeで全部やればいいのでは?」
と思ってしまいます。
それでもSnowflakeがSAP分析の主役にならない理由
最大の理由は、
SnowflakeはSAP業務を理解していない という点です。
Snowflake上では、
- 勘定の意味
- 会計期間の考え方
- 売上と返品・値引の関係
- 組織構造
といったものは、
ただのカラム情報 です。
つまり、
「この売上は確定売上か?未確定か?」
「この期間の数字は締め後か?」
といった判断は、
すべて人が設計しなければならない。
ゼロコピーによって
「データの移動」は減りましたが、
「意味の変換」は消えていません。
この点が、
SAP業務分析では致命的な差になります。
SAP Databricks とは何か
Databricksの本質
Databricks は、
BIツールでもDWHでもありません。
Databricksの本質は、
- 分散データ処理
- 機械学習
- AIモデル構築
- 特徴量エンジニアリング
です。
つまり、
人が見るための分析ではなく、
コンピュータに学習させるための分析
が主戦場です。
SAP Databricks(ゼロコピー)の意味
SAP Databricks連携(ゼロコピー)が意味するのは、
- SAP業務データを
- 余計な複製なしに
- AI/予測処理に使える
ということです。
これにより、
- 売上予測
- 需要予測
- 不正検知
- 要因分析
といった 高度分析 が、
SAPデータを使って現実的に行えるようになりました。
ただし、
Databricks自体は「答えを見せる」場所ではありません。
Databricksが向いているSAPユースケース
Databricksが真価を発揮するのは、
- 販促データ × S/4HANA で売上予測
- 多数の説明変数を使った需要予測
- ログ・テキスト・時系列を含む分析
といった 試行錯誤が前提の領域 です。
ここでは、
- 柔軟なデータ加工
- モデルの作り直し
- 精度検証
- 再学習
が頻繁に発生します。
👉
この用途にBWやDatasphereを使おうとすると、重すぎる
というのが実務感です。
Snowflake と Databricks の決定的な違い
混同されがちですが、両者の役割は異なります。
- Snowflake:
大量データを蓄積し、配る場所 - Databricks:
そのデータを使って予測・学習する場所
Snowflakeは「静」、
Databricksは「動」。
どちらが上という話ではなく、
役割が違うだけです。
SAP Datasphere / BW と比べて何が違うのか
視点①:業務意味論
- SAP系(Datasphere / BW):
業務の意味を前提にしている - Snowflake / Databricks:
意味は後付け
SAP分析では、
この差がそのまま 設計コストと事故率 に直結します。
視点②:誰が設計するか
- SAP系:
業務+IT+コンサル - 非SAP系:
データエンジニア/データサイエンティスト
どちらが正しいかではなく、
組織に合うかどうかが重要です。
視点③:安心感
- SAP系:
安全・説明しやすい - 非SAP系:
自由・責任が重い
経営・会計・監査に近いほど、
SAP系が選ばれる理由はここにあります。
実務で多いアーキテクチャパターン
パターン1:SAP中心(王道)
S/4HANA → Datasphere / BW → SAC
パターン2:全社横断+AI
S/4HANA + 販促/CRM → Snowflake → Databricks → SAC
パターン3:二刀流(最も現実的)
公式KPI:SAP側
予測・探索:Snowflake + Databricks
👉置き換えではなく役割分担
結局どう選ぶべきか
判断軸はシンプルです。
- SAP業務が分析の主役か?
- 数字の「正」をどこに置くか?
- AI・予測を本気でやるか?
- データチームはいるか?
これに答えれば、
Snowflake / Databricks は自然に「使いどころ」が決まります。
まとめ:Snowflake / Databricks はSAPの敵ではない
SnowflakeやDatabricksは、
SAPを置き換えるためのものではありません。
- Snowflake:SAP分析を広げる
- Databricks:SAPデータを賢く使う
SAPは今も、
業務分析の軸です。
その軸を理解したうえで
Snowflake / Databricks を使うと、
初めて「強いアーキテクチャ」になります。
※本記事は2025年12月時点の情報です。最新情報は公式サイトをご確認ください。


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