はじめに|「あのコンサルの要件定義、なんであんなに甘いんだ?」
SAPの要件定義会議に出席していて、こう思ったことはありませんか?
- 「そんな要件、標準機能じゃ絶対に無理なのに……」
- 「裏側のテーブル構造を分かってないから、非効率な設計になるんだよ」
- 「顧客の言うことを持ち帰るだけで、コンサルとしての提言がないな」
もしあなたが設計者(テクニカルコンサルやデベロッパー)として現場に入っているなら、一度は感じたことがある**「上流工程への違和感」**。
実は、その違和感こそが、あなたが**「最強の業務コンサル」になれる最大の証拠**です。
多くの設計者は、こう考えてブレーキをかけがちです。
「自分はプログラムはできるけど、業務知識も顧客折衝も自信がない……」
しかし、今のSAP市場で最も価値が高いのは、**「裏側のロジックがわかった上で、上流の意思決定ができるコンサル」**です。
なぜ設計経験者が圧倒的に強いのか。その3つの理由を深掘りします。
理由1:Feasibility(実現可否)の「即断即決」が信頼を呼ぶ
要件定義がグダる最大の原因は、「できる・できない」の判断がその場で下せないことにあります。
一般的な業務コンサルは、顧客からの要望に対し、
- 一度持ち帰ってテクニカルチームに確認する
- 次回の会議で回答するというステップを踏みます。
このタイムラグがプロジェクトのスピードを落とし、顧客に**「この人はシステムに詳しくない」という不安**を抱かせる原因になります。
設計経験者の思考回路
設計を経験しているあなたなら、要望を聞いた瞬間に頭の中で次の思考が走ります。
- 「その要件は標準のBAdIのこのタイミングでいけるな」
- 「データモデルと乖離しすぎているから、業務フローを変える提案をすべきだ」
- 「S/4HANA Cloudなら、そのカスタマイズは制限対象だ」
この**「技術的裏付けを持った即答」**は、顧客にとって何物にも代えがたい安心感を与えます。
「この人に相談すれば、最短ルートが見つかる」という信頼こそが、コンサルの最大の武器です。
理由2:標準機能の「限界」と「活かし方」をロジックで語れる
最近のSAP導入のキーワードは**「Clean Core」**です。
可能な限り標準機能を使い、アドオンを排除して柔軟性を保つことが至上命題となっています。
しかし、これを実践するには、単なるマニュアルの知識ではなく**「ロジックの理解」**が必要です。
「マニュアル知識」vs「ロジック知識」
| 視点 | 普通のコンサル | 設計経験のあるコンサル |
| 根拠 | マニュアルに書いてあるから | 裏側の処理フローを知っているから |
| 提案 | 「標準でやりましょう」と押し付ける | 業務と仕訳の矛盾を突き、納得感のある代替案を出す |
| リスク回避 | アドオンの副作用に気づけない | **影響範囲(サイドエフェクト)**を即座に予見できる |
設計経験があるからこそ、安易なアドオンに逃げず、かつ標準機能を最大限に「使い倒す」提案ができるのです。
理由3:「現場の言葉」を「システムの言葉」に翻訳する精度の高さ
要件定義の失敗は、往々にして**「翻訳ミス」**から生まれます。
顧客は「自分の言葉」で話し、コンサルは「SAP用語」で聞き、設計者は届いた仕様書を読んで「そんなの聞いてない」と頭を抱える。
この伝言ゲームのズレが、後工程での大規模な手戻りを引き起こします。
設計経験者は「バイリンガル」
設計を経験したコンサルは、顧客の要望を聞いた瞬間に正確な変換が行われます。
- 顧客の要望: 「受注の項目を出荷に自動で引き継ぎたい」
- ビジネスロジック: 受注(VBAK/VBAP)から出荷(LIKP/LIPS)へのデータコピー
- 解決策: **コピー管理(Copy Control)**の設定か、ユーザーエグジットか
この翻訳精度の高さこそが、プロジェクトの炎上を防ぐ最大の手立てとなります。
設計者からの脱却|いつ「キャリアの転換」をすべきか?
「自分はまだ特定のモジュールしか知らない」
「もっと技術を極めてからの方がいいのでは?」
そう迷う気持ちも分かります。
しかし、意識すべきは**SAPコンサルタントとしての「市場価値」**です。
「作れる」だけの人のリスク
30代、40代と年齢を重ねるにつれ、求められる役割は確実にシフトします。
「手は動かせるが、折衝はできません」というポジションは、オフショア開発やAIの進化により、今後単価が下がるリスクを孕んでいます。
逆に、「裏側を知っている」強みをベースに、早い段階で上流の振る舞いを身につけた人は、稀少な存在として価値が爆発的に高まります。
「経験3〜10年」が最大のチャンス
設計・開発を通り、SAPの全体像が見え始めてきたこの時期こそが、業務コンサルへシフトするためのゴールデンタイムです。
キャリアの現在地を確認するために
「自分は今、上流に上がるべきタイミングなのか?」
「今のスキルは外の世界でどう評価されるのか?」
そう感じた時に一番やってはいけないのは、一人で悩み続けて「現状維持」を選択することです。
私が「旅するコンサル」として自由に働けるようになった背景には、定期的に自分の市場価値を客観的にチェックし、適切なタイミングで環境を変えてきた経験があります。
もし、あなたが今少しでも不安を感じているなら、ぜひこちらの記事を読んでみてください。
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SAP業界で3〜6年ほど経験を積むと、誰しもが分岐点に立たされます。
私が実際に見てきた「伸びる人」と「詰む人」の決定的な違いについてまとめています。
さいごに|設計経験は「一生モノ」の武器になる
業務コンサルタントへ進んでも、あなたが培ってきた「設計の勘所」や「ロジック的思考」が消えることはありません。
むしろ、上流に行けば行くほど、その経験があなたを助けてくれるはずです。
「要件定義がグダる理由」がわかるあなたは、もう次のステージに行く準備ができています。
一歩踏み出して、自分の価値を試してみましょう!!

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