はじめに:S/4HANAに「標準の分析機能」があること、知っていますか?
S/4HANAを触り始めたばかりの方や、
ECCからの移行プロジェクトに関わっている方に、まず聞いてみたいことがあります。
「S/4HANAに、最初から使える分析機能があることを知っていますか?」
実はこの質問、現場で聞くと意外なほど「知らない」という回答が返ってきます。
分析といえば、
- BWを作る
- SACを導入する
- Excelにデータを出す
こうした発想が先に来てしまい、
S/4HANA標準の分析機能をきちんと確認しないまま設計が進む
ケースも少なくありません。
これ、正直かなりもったいないです。
なぜなら、S/4HANAには最初から「使える分析機能」が組み込まれているからです。
結論:それが「SAP Embedded Analytics」
S/4HANAに標準で搭載されている分析機能、
それが SAP Embedded Analytics です。
名前だけ聞くと少し難しそうですが、
本質はとてもシンプルです。
- S/4HANAの中に組み込まれている
- 追加でデータを持たない
- 業務データをリアルタイムで分析できる
つまり、
「業務システムの中で、そのまま使える分析機能」
という位置づけです。
特別な分析基盤を用意しなくても、
S/4HANAを使っていれば、すでに利用できる環境が整っている。
これがSAP Embedded Analyticsの最大の特徴です。
なぜ「知らなきゃヤバイ」のか?
では、なぜここまで強い言い方をするのか。
理由はシンプルです。
知らないと、設計判断を間違えやすいから
SAP Embedded Analyticsを知らないまま設計を進めると、
- 本当は標準で足りるのに、BWを作りコストが増加してしまう
- 単純な一覧のために、アドオン帳票を作ってしまう
- 毎回Excel抽出で業務が回る前提になってしまう
といった 「やらなくていい苦労」 が増えがちです。
もちろん、BWやSACが不要だと言っているわけではありません。
ただ、最初に標準機能を理解せずに拡張を考えるのは、設計として危険です。
SAP Embedded Analyticsは、
S/4HANA時代の「前提知識」と言ってもいい機能なのです。
SAP Embedded Analyticsとは何か(超かみ砕き解説)
ここで一度、難しい用語を極力使わずに説明します。
SAP Embedded Analyticsとは、
- S/4HANAの中にある
- 業務データをそのまま使う
- 分析・可視化の仕組み
です。
大きな特徴は、
「分析用に別のデータベースを持たない」 という点です。
ECC時代は、
- トランザクション処理はECC
- 分析はBW
という分離が前提でした。
一方、S/4HANAでは、
同じデータを使って 処理と分析を同時に行う ことができます。
この考え方の中心にあるのが、SAP Embedded Analyticsです。
標準で何ができるのか?
では、実際に何ができるのでしょうか。
SAP Embedded Analyticsで標準的にできることは、次のようなものです。
- 業務データの一覧表示
- KPIの可視化
- ドリルダウン(集計→明細)
- Fioriアプリ上での分析画面
- クエリベースの分析
たとえば、
- 売上の状況をその場で確認する
- 未処理伝票を一覧で把握する
- 月次の進捗をリアルタイムで見る
といった 「日々の業務判断」 に使う分析には、十分すぎる機能を持っています。
「分析=重たい仕組み」というイメージを持っている方ほど、
思ったよりできる と感じるはずです。
どんな人・業務に向いているのか?
SAP Embedded Analyticsが特に向いているのは、次のようなケースです。
- 業務部門のユーザー
- 日々の業務状況をすぐに確認したい人
- 定型レポートを頻繁に見る業務
- S/4HANA標準をできるだけ活かしたい企業
ポイントは、
「業務の延長線上で見る分析」 であることです。
別システムにログインして分析する、
というよりは、
業務画面の流れで、自然に数字を確認する
そんな使い方に向いています。
正直、ここは期待しすぎない方がいい
ここからはコンサル目線の本音です。
SAP Embedded Analyticsは便利ですが、
万能な分析基盤ではありません。
次のようなことを期待しすぎると、ギャップが生まれます。
- 複数システムを横断した高度な分析
- 大量の履歴データを使った長期分析
- 自由度の高いダッシュボード作成
- 経営層向けの高度な可視化
これらは、
BWやSACの得意領域です。
SAP Embedded Analyticsは、
「業務分析の入口」 と考えるのがちょうど良いポジションです。
BW・SACとはどう違うのか?
よくある疑問なので、役割ベースで整理します。
- SAP Embedded Analytics
→ 業務の中で使う分析、リアルタイム確認 - SAP BW
→ データ蓄積、横断分析、履歴管理 - SAP Analytics Cloud(SAC)
→ 可視化、経営判断、シミュレーション
どれが上、どれが下、ではありません。
役割が違うだけです。
Embedded Analyticsを理解したうえで、
「どこから先をBWやSACに任せるか」を考えるのが、
S/4HANA時代の正しい設計です。
BWやSACについては詳しく知りたい方は、以下のブログを確認してみてください
👉【徹底解説】SAP Analytics Cloud(SAC)とは?できること・できないことから理解する分析基盤
👉SAP BW/4HANAとは?役割・限界・使い分けまで整理して理解する
よくある勘違い・失敗パターン
現場でよく見る失敗も挙げておきます。
- 標準分析を見ずに、いきなりBW設計に入る
- 分析要件を詰めすぎて、結局誰も使わない
- Embedded Analyticsを過信して、役割を超えた使い方をする
SAP Embedded Analyticsは、
「知らないと損」ですが、「過信すると危険」 な機能でもあります。
まとめ:SAP Embedded Analyticsは「最初に知るべき標準分析機能」
SAP Embedded Analyticsは、
- 派手ではない
- でも、確実に使える
- S/4HANA設計の前提になる
そんな存在です。
知らずに進めると、
無駄な開発や過剰な構成になりがちですが、
きちんと理解して使えば、
S/4HANAの価値を底上げしてくれる標準機能になります。
S/4HANAに関わるなら、
まずは 「こんな分析機能が最初からある」
ということだけでも、ぜひ覚えておいてください。
それだけで、
設計の見え方が変わってくるはずです。


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