SAP開発に携わり始めると、
「結局、どのトランザクションを覚えればいいの?」
「Tコードが多すぎて、何から手を付ければいいのか分からない…」
と感じる方も多いのではないでしょうか。
SAPには数千を超えるトランザクションコード(Tコード)が存在しますが、
実務で頻繁に使うものは、実はそれほど多くありません。
本記事では、
SAP開発・保守の現場で“本当によく使うトランザクションコード”をカテゴリ別に整理し、
それぞれの役割や使いどころを表形式で分かりやすく解説します。
これからABAP開発に入る方や、S/4HANA案件で調査・改修を行う方にとって、
迷ったときに立ち返れるリファレンス記事になれば幸いです。
ABAP開発・調査で必ず使うトランザクション
SAP開発者が最初に覚えるべきなのが、ABAP開発・調査系のトランザクションです。
プログラム作成、テーブル確認、エラー調査など、日常業務の大半はこのカテゴリで完結します。
| Tコード | 名称 / 役割 | 主な利用シーン |
|---|---|---|
| SE80 | オブジェクトナビゲータ | プログラム・クラス・DDICを横断的に管理 |
| SE38 | ABAPエディタ | プログラム作成・修正 |
| SE11 | ABAP Dictionary | テーブル・構造・データ要素定義 |
| SE16N | テーブルデータ表示 | データ調査(最頻出) |
| SE93 | トランザクション定義 | Tコード作成・修正 |
| ST22 | ABAPダンプ解析 | 実行時エラー調査 |
| SM37 | ジョブ監視 | バッチ処理の確認 |
特に SE80・SE11・SE16N・ST22 は、
「調査 → 原因特定 → 修正」という一連の流れの中で必ず登場します。
まずはこの4つを迷わず使える状態になることが、SAP開発者としての第一歩です。
カスタマイズ(IMG・設定確認)系トランザクション
ABAP開発では、プログラムだけを見ていても原因が分からないケースが多くあります。
その理由は、SAPの処理ロジックがカスタマイズ設定に強く依存しているためです。
| Tコード | 設定内容 | 開発時のポイント |
|---|---|---|
| SPRO | IMG全体 | カスタマイズ確認の起点 |
| OBYC | 自動仕訳 | FI・MM連携の要 |
| FBZP | 支払プログラム | F110関連調査 |
| OMJJ | 移動タイプ | 在庫評価ロジック |
| OB52 | 会計期間管理 | 伝票エラー原因 |
| SM30 | テーブル保守 | 設定値の直接確認 |
開発者視点では、
**「プログラムの処理」+「カスタマイズ設定」**をセットで確認できるようになると、
調査スピードと理解度が一気に向上します。
FI / MM / SD 実務データ参照用トランザクション
SAP開発では、実際の業務データを確認しながら調査を進める場面が非常に多くあります。
その際に活躍するのが、FI・MM・SDの参照系トランザクションです。
| モジュール | Tコード | 内容 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| FI | FBL1N | 仕入先明細 | APデータ確認 |
| FI | FBL5N | 得意先明細 | ARデータ確認 |
| FI | FB03 | 会計伝票照会 | 仕訳内容確認 |
| MM | MB51 | マテリアル伝票 | 在庫・移動履歴 |
| MM | ME23N | 購買発注照会 | 発注データ確認 |
| SD | VA03 | 受注照会 | 販売伝票確認 |
| SD | VL03N | 出荷伝票照会 | 出荷状況確認 |
「この値はどこから来たのか?」
「業務上はどのように扱われているデータなのか?」
を確認できるようになると、机上の開発から実務に強い開発者へと一段階ステップアップできます。
デバッグ・テスト・権限調査系トランザクション
障害対応やユーザー問い合わせ対応では、
デバッグ・権限調査スキルがそのまま評価につながると言っても過言ではありません。
| Tコード | 機能 | 使いどころ |
|---|---|---|
| /h | デバッガ起動 | 処理ロジック追跡 |
| ST01 | 権限トレース | 権限エラー原因調査 |
| SU53 | 権限エラー表示 | 権限不足の即確認 |
| SCI | コード検査 | 品質チェック |
| ATC | ABAP Test Cockpit | S/4HANA必須 |
特にS/4HANAでは、ATCによる静的チェックが標準となっているため、
早めに慣れておくことをおすすめします。
移送・システム管理系トランザクション
開発が完了した後は、移送・本番反映という重要な工程が待っています。
このフェーズで使うトランザクションも、開発者として最低限押さえておく必要があります。
| Tコード | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| SE10 / SE09 | 移送依頼管理 | 依頼の分割・整理 |
| STMS | 移送管理 | 本番反映操作 |
| SCC1 | クライアントコピー | マスタ同期 |
| SM21 | システムログ | 障害調査 |
「開発はできるけど移送が分からない」状態は、
現場では意外と不安視されがちなポイントです。
CDS / HANA / S/4HANA関連トランザクション
S/4HANAでは、従来のABAP開発に加えて、
HANA・CDS・Fioriを意識した調査・開発が求められます。
| Tコード | 内容 | 活用ポイント |
|---|---|---|
| SE24 | クラスビルダ | OO設計 |
| ST05 | SQLトレース | CDS・性能調査 |
| DBACOCKPIT | DB監視 | HANA状態確認 |
| /UI2/FLP | Fiori起動 | アプリ確認 |
特に ST05 は、CDSビューやパフォーマンス問題の調査で非常に重要なトランザクションです。
まとめ:覚えるべきTコードは「整理」すれば少ない
SAP開発において重要なのは、
すべてのトランザクションを暗記することではありません。
- カテゴリごとに役割を理解する
- 使用頻度の高いTコードから優先的に覚える
- 調査の流れとセットで使えるようになる
この3点を意識するだけで、
SAP開発の理解度と作業スピードは確実に向上します。


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