SAP BW/4HANAとは?役割・限界・使い分けまで整理して理解する

BDC

はじめに

これまでの記事では、SAP Analytics Cloud(SAC)やSAP Datasphereについて解説してきました。
それらを読んだ多くの方が、次に感じる疑問は次のようなものではないでしょうか。

「では、BW/4HANAは今どう位置づければいいのか?」

Datasphereという新しいデータ基盤が登場し、SACが標準の分析フロントとして使われる中で、
SAP BW/4HANA の役割は、以前より分かりにくくなっています。

本記事では、BW/4HANAについて

  • 何ができるのか
  • 何ができないのか
  • Datasphere・SACとどう使い分けるべきか

を整理し、SAP分析基盤を設計するための視点を提供します。


SAP BW/4HANAとは何か

SAP BW/4HANAは、従来のSAP BWを刷新し、SAP HANAを前提に再設計された分析専用DWHです。
名前に「/4HANA」と付いている通り、S/4HANAと同じ思想で設計されています。

重要なのは、BW/4HANAは単なる「BW on HANA」ではないという点です。
不要なレイヤーやオブジェクトが整理され、
よりシンプルで高速なDWHとして再構築されています。

ECC時代のBWと同一視すると誤解しやすいですが、
BW/4HANAは今でも「堅牢な分析基盤」という明確な役割を持っています。


BW/4HANAでできること①:大規模データの蓄積・加工

BW/4HANAが最も得意とするのは、大規模データの蓄積と加工です。

長期間にわたる実績データや、細かい粒度のトランザクションデータを保持し、
複雑な変換・集計・履歴管理を安定的に実行できます。

ETL処理、スナップショット管理、履歴管理など、
「分析用DWHとして王道の機能」を高い完成度で備えており、
金融・製造・流通といった領域で長く使われてきた理由がここにあります。


BW/4HANAでできること②:分析向けデータモデルの管理

BW/4HANAでは、ADSOなどのオブジェクトを用いて、
分析に特化したデータモデルを明示的に設計・管理します。

時間軸、階層構造、粒度といった要素を事前に定義し、
「どう分析するか」をデータ構造として固定化する思想です。

これは自由度よりも、
再現性・統制・説明可能性を重視する設計といえます。

Datasphereが柔軟性を重視するのに対し、
BW/4HANAは「作り込む分析基盤」を提供します。


BW/4HANAでできること③:既存資産の継続活用

現実的な観点で重要なのが、既存BW資産を活かせる点です。

ECC時代から積み上げてきた

  • データモデル
  • 変換ロジック
  • レポート資産

は簡単に捨てられるものではありません。

BW/4HANAは、それらを活かしながら段階的にモダナイズする選択肢を提供します。
「すべてを置き換える」のではなく、
重要領域はBWに残すという判断ができることは大きな強みです。


他製品と比較して「BW/4HANAではできないこと」

一方で、BW/4HANAには明確な限界もあります。

まず、リアルタイム性は限定的です。
基本はバッチ前提であり、
S/4HANA Embedded Analyticsのような即時分析には向きません。

また、Datasphereのような柔軟なデータ仮想化は得意ではありません。
BW/4HANAは、データを蓄積・加工する前提の設計です。

さらに、クラウドネイティブな軽快さもありません。
運用・管理コストがかかり、
スモールスタートには不向きな側面があります。


BW / Datasphere / SAC の役割整理

ここで一度、3製品の役割を整理しておきます。

  • BW/4HANA
    → 蓄積する・作り込む(堅牢な分析用DWH)
  • Datasphere
    → つなぐ・整える(意味論を保ったデータ統合)
  • SAC
    → 見る・考える・決める(可視化・計画・意思決定)

同じ「分析系」でも、
担っているレイヤーがまったく異なります。


どう使い分けるべきか①:BW/4HANAを選ぶケース

BW/4HANAが向いているのは、次のようなケースです。

  • 長期間・大量の履歴データを扱う
  • 複雑な集計ロジックを安定運用したい
  • 既存BW資産が大きい
  • 再現性・統制・監査対応を重視する

BW/4HANAは、
**「重いが信頼できる分析基盤」**です。


どう使い分けるべきか②:Datasphereを選ぶケース

Datasphereが向いているのは、次のような場面です。

  • S/4HANAを中心にデータ活用を進めたい
  • SAP内外のデータを意味を保ってつなぎたい
  • データコピーを最小限にしたい
  • 柔軟に分析基盤を進化させたい

Datasphereは、
分析のための土台を整える役と考えると理解しやすくなります。


どう使い分けるべきか③:SACを選ぶケース

SACは役割が最も明確です。

  • 経営・マネジメント向けの可視化
  • KPIモニタリング
  • 予算・見込・フォーキャスト
  • What-if分析

SACはデータを持つ場所ではなく、活用する場所です。
前段(BW / Datasphere)が整理されていないと、力を発揮できません。


よくある構成パターン

実務では、次のような構成がよく見られます。

  • BW + SAC
    → 既存BWを活かし、フロントを刷新
  • Datasphere + SAC
    → 新規・俊敏な分析基盤
  • BW + Datasphere + SAC
    → 重要領域はBW、新規・外部はDatasphere、可視化はSAC

「全部使う=無駄」ではなく、
役割が明確なら合理的です。


まとめ

SAP BW/4HANAは、「終わった製品」ではありません。
ただし、万能でもありません。

  • 蓄積・加工:BW/4HANA
  • 統合・意味づけ:Datasphere
  • 可視化・意思決定:SAC

この役割分担を理解すると、
SAPの分析基盤は「難しい」から「設計できる」に変わります。

※本記事は2026年1月時点の情報です。最新情報は公式サイトをご確認ください。

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