はじめに
ERPシステムの代名詞ともいえる SAP。
世界中の大企業に導入されており、日本でも多くの有名企業が利用しています。
しかし導入を検討する際に必ず耳にするのが、「SAPは高い」という声です。
ではなぜSAPは高いといわれるのでしょうか?
本記事ではその理由を分解し、さらに高額でも選ばれ続ける背景や、
費用を抑える方法について解説します。
SAPソリューションの特徴(前提)
まず「なぜ高いのか」を理解するには、SAPがどんな特徴を持つソリューションなのかを知る必要があります。
- 世界シェアNo.1のERP
製造、物流、会計、人事など幅広い業務領域をカバー。グローバル企業での採用実績が豊富。 - グローバル対応
多言語・多通貨対応に強く、国ごとの会計基準や税制にも柔軟に対応可能。 - 大企業に特化した業務標準化
企業規模が大きくなるほど業務は複雑化しますが、SAPはその複雑さを標準化して統一的に管理できる強みを持っています。
このような背景があるため、SAPは「大規模企業に選ばれるERP」として定着しています。
「高い」といわれる主な理由
ライセンス費用の高さ
SAPはユーザー単位のライセンス体系を基本としています。
さらに、FI(会計)、MM(購買)、SD(販売)など、
業務領域ごとにモジュールが分かれており、利用範囲が広がるほどライセンス費用も増えます。
クラウド型の「RISE with SAP」や「GROW with SAP」でも、
基本利用料に加えユーザー数や使用量に応じた追加課金が発生するため、
規模が大きい企業ほど費用は膨らみがちです。
導入プロジェクトの膨大なコスト
SAP導入は単なるシステムインストールではなく、業務改革そのものを伴います。
- 要件定義に数カ月
- カスタマイズやアドオン開発に半年〜1年
- テストやユーザー教育に追加で数カ月
このように、フル導入には1年以上かかるケースも珍しくありません。
その間に投入されるコンサルタントやエンジニアの工数が膨大となり、
導入コストが数億円規模になることも多いのです。
保守・運用費用の大きさ
導入が終わっても費用は続きます。
- 年間保守料(通常はライセンス費用の20%前後)
- 運用保守要員の確保(SAPスキル保有者は人件費が高い)
- バージョンアップやサポートパッケージ適用のコスト
これらが毎年かかるため、長期的に「高い」と感じる要因になります。
アドオン開発やカスタマイズ費用
SAPは「業務を標準プロセスに合わせる」思想が基本ですが、
実際には企業ごとの固有業務に対応するためアドオン開発が必要になります。
ABAPという専用開発言語を扱える技術者は限られており、その人件費が高額。
さらにアドオンは保守・改修にもコストがかかるため、長期的な費用増につながります。
インフラ・周辺システム連携コスト
オンプレミスの場合は、HANAデータベースを動かすためのサーバーやストレージが高額。
クラウドであってもIaaSの利用料やネットワーク構築、セキュリティ対策費が追加で発生します。
さらに周辺システム(生産管理、倉庫管理、外部会計システムなど)との連携開発にも大きな費用がかかります。
他のERPやクラウドと比べた時の違い
近年は中小規模向けのクラウドERP(Oracle NetSuite、Workday、国内のfreeeなど)も普及しています。これらは初期費用が安く、短期間で導入できることが強みです。
一方SAPは、大規模・複雑な業務プロセスを一元管理できる点が圧倒的な違いです。
規模が大きい企業ほど、他のシステムではカバーしきれず、最終的にSAPが選ばれるケースが多く見られます。
「高い」費用の裏にある価値
SAPが高額であっても導入され続けるのは、それだけの価値があるからです。
- グローバルでの業務標準化
海外子会社を含む全世界の会計・購買・販売を統一管理できる。 - コンプライアンス対応
IFRSやSOX法など、国際的な法規制に標準で対応可能。 - 長期的な安定性
20年以上稼働する大規模システムも多く、長期にわたって企業の基幹を支える。 - 投資回収の可能性
導入コストは高いものの、業務効率化や統制強化による効果で長期的にはコスト削減や競争力向上につながる。
費用を抑える方法・工夫
高額なSAPですが、工夫次第で費用を抑えることも可能です。
- クラウド型の活用
「RISE with SAP」「GROW with SAP」でインフラ投資を削減。 - Fit-to-Standardアプローチ
業務をSAP標準に合わせ、アドオン開発を最小限に。 - 外部ソリューションとの使い分け
すべてをSAPで実現せず、特定領域は外部SaaSと連携。 - 導入パートナー選定の工夫
実績あるパートナーを選ぶことで無駄な工数を削減。
まとめ
SAPが「高い」といわれるのは事実ですが、それはライセンスや導入費用だけでなく、業務改革・人件費・保守など多くの要素が積み重なるためです。
しかしその裏には、グローバル企業に求められる 業務標準化・コンプライアンス対応・長期安定性 という大きな価値があります。
導入を検討する際は、目先の費用だけでなく「投資対効果」や「自社の成長戦略との適合性」を軸に判断することが重要です。
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