S/4HANAを導入している企業において、日々の業務データはしっかり管理できているけれど、「分析や可視化となると使いづらい」、「他システムのデータとつなげにくい」そんな悩みを感じていませんか?
実際、多くの企業が「データはあるのに十分に活かせていない」という課題を抱えており、この解決策として注目されているのが、SAPが提供する Business Data Cloud(BDC) です。
BDCは、S/4HANAをはじめとしたSAPシステムや非SAPのデータをまとめ、わかりやすく分析・活用できるようにする“次世代のデータ基盤”です。
この記事では、初心者の方向けにBDCの基本、含まれるソリューション、そしてS/4HANAと組み合わせた活用方法をやさしく解説していきます。
SAP BDCとは?
SAP Business Data Cloud(BDC)は、SAPが提供する新しいクラウドベースのデータ基盤です。
従来のデータウェアハウスやデータレイクの役割を進化させ、**企業のあらゆるデータを一元的に管理・統合し、AIや分析に活用できる状態に整える「データファブリック」**の中心として位置づけられています。
初心者の方は、まず「BDCはデータをためるだけでなく“使える状態に整える土台”」と理解すれば十分です。
BDCに含まれる主なソリューション
BDCは単体の製品ではなく、いくつかのソリューションをまとめたスイートです。
ソリューション | 役割 |
---|---|
SAP Datasphere | データ統合・モデリング・ガバナンスを担う中核サービス |
SAP Analytics Cloud (SAC) | データの可視化・分析・レポート作成 |
SAP Business Intelligence(BI)機能群 | 従来のBIをクラウド上で統合し、BDCに包含 |
SAP + Databricks連携 | データレイクハウス基盤との戦略的連携。AI・ビッグデータ処理を強化 |
👉 ポイントは、BDCは既存サービスや提携基盤をまとめて“データ分析の土台”を提供している ということです。
BDCでできること(初心者向けポイント)
- データ統合:SAPと非SAPのデータをまとめる
- データガバナンス:セキュリティや権限を一元管理
- 分析・可視化:SACと組み合わせてレポートやダッシュボードを作成
- AI活用:BDC上のデータをAIに接続して予測や自動化に活用
メリットとデメリット(初心者目線)
メリット
- データをまとめて整理できる
- SAP以外のデータも統合可能
- AIや最新基盤ともつながる
デメリット
- 新しいサービスで事例が少ない
- 習熟の学習コストがかかる
- 規模によっては費用が大きい
価格帯のイメージ
- ライセンス費用:数百万円〜数千万円(規模・ユーザー数次第)
- 導入費用:数千万円〜億単位(統合範囲や外部連携による)
初心者が理解しておくべきポイント
- BDCはSAPの新しいデータ基盤であり、「分析やAIの前段階にある土台」
- Datasphere・SAC・Databricks連携を中核とするソリューション群
- Data Marketplaceやデータプロダクトは「概念・機能」であり、BDCの構成製品ではない
- 将来的にSAPのデータ分析・AI活用の中心となる可能性が高い
S/4HANAユーザーにとってのBDC
S/4HANAは業務データをリアルタイムに管理できる優れたERPですが、そのままでは高度な分析や外部データとの連携に限界があります。
- 制約 1:標準レポートの範囲を超えた分析が難しい
経営層や現場部門が自由に「見たい切り口」で分析するには追加の仕組みが必要です。 - 制約 2:非SAPシステムとの横断分析がしにくい
物流、マーケティング、IoTなど外部のデータと組み合わせて分析する場合、S/4HANA単体では不十分です。
ここにBDCを組み合わせることで、S/4HANA内のデータと外部システムのデータを統合し、横断的に分析できるようになります。
例えば、販売データと顧客データを組み合わせて「どの施策が収益に直結しているか」を可視化することが可能です。
👉 BDCは「S/4HANAをデータ活用の中心に引き上げるための拡張基盤」 と捉えると分かりやすいでしょう。
BDCと他SAPソリューションとの関係性
- SAP Datasphereとの関係
BDCの中核を担うのがDatasphere。データ統合・モデリングを担う。 - SAP Analytics Cloud(SAC)との関係
SACは「見える化」のツール、BDCはその「土台」。セットで使うのが基本。 - SAP BW/4HANAとの違い
従来のDWHであるBWを、クラウドネイティブに進化させたのがBDC。 - Databricksとの関係
Databricksは大規模データ処理に強い基盤。BDCと連携することで、SAP外のデータやAI活用も強化できる。
AIと組み合わせたBDC活用
BDCの大きな強みは、整備したデータをAIに直接つなげられる点です。
ここでは、AIと組み合わせた代表的な活用シナリオを紹介します。
- 需要予測
過去の販売データや外部市場データをBDCに統合し、AIに学習させることで、精度の高い需要予測を実現。 - 在庫最適化
倉庫や物流データをAIに渡し、在庫の過不足をリアルタイムに調整。過剰在庫や欠品を防止。 - 不正検知
金融取引データやログデータをBDCに集約し、AIにより不正の兆候を自動検知。 - 製造設備の異常予知
IoTセンサーの稼働データをBDCに集め、AIで故障の兆候を事前に察知。メンテナンスコストを削減。
👉 このようにBDCは、AI活用の“データ供給源”として機能します。
整ったデータをAIに渡せることで、企業はより迅速で正確な意思決定を行えるようになります。
まとめ
SAP Business Data Cloud(BDC)は、
データを「ためる」から「活かす」へと進化させるSAPの新しい基盤です。
初心者の方は「BDC=データを整理し、分析やAIに使えるようにする仕組み」と理解すれば大丈夫です。
今後ますます注目度が高まるソリューションなので、
早めにキャッチアップしておくと企業のDX推進やAI活用に大きな強みとなるでしょう。
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